霊の力を借りる事で、傷を負い、病に倒れたものを癒していくもの達の事であり、 科学的医療を一切用いず、純魔法的な治療のみを行なうそのあり方は、 もはや医者というよりは祈祷師や僧侶、あるいは、精霊に対する司祭と表現する方が近い。 しかし、玄霧藩国においては、これまでと変わらず、精霊"医"と呼ばれており、 これまでと同様に、これからも、人々の苦しみや悲しみに抗い続ける事を職務としている。 その装いは、実に特徴的だ。 その身に広く刺青を入れ、服は(拵えこそ現代の製法ではあるが)まるで原始の人のように布地が少ない。 医師と名乗りながら、医学による療法を用いないために白衣を着ておらず、 いわゆるマッドサイエンティスト系統の医療者が特徴として保有していた、多機能式医療装備も持っていないどころか 一般的な医師のイメージである所の、『無菌室で白衣にマスクとキャップ、ゴーグルをしてメスを握って手術台の前に立つ』などという姿の欠片もない。 そちらはそちらで、玄霧藩国の医師の姿の一つであり、現在も変わらず活動しているのだが、 精霊医のありようが既存の医師とは異なる事が、外見一つでここまではっきり示されるというのも、稀有な例かもしれない。 |